「 わたしにはセスがいるの 」
お父様はそんなわたしを、鼻で笑った。
気も立場も弱いお母様は、そんなお父様を肯定するばかりで。
わたしは呆気なく、セスと離れることになった。
「 セスぅ、セスぅ..... 」
「 私に返して...全てを返して...セスを、セスだけでいいから... 」
グレンジャー家に嫁いでからのわたしは、泣いてばかりだった。
それこそ、わたしを見初めたボルトフ様も気の毒に思われた程に。
他の男を思って泣くわたしは、ボルトフ様の瞳にどう映っていたのだろう。
「 アラキナが毎夜毎夜泣いているので、セスとやらをこちらに渡してほしい 」
セスと手をつなぎ、笑ってボルトフ様にお礼を言う。
「 ありがとうございます 」
「 いいや。お安い御用さ 」


