セスと出会ったのはまだ本当に幼かったころ。
彼はわたしより3つ程年上で、優しくて、包容性のある男だ。
「 セス、ずっと守ってくれるよね 」
目を細めて頷いてくれるセスが、愛おしい。
幽閉というような形で、使用人3人ととある塔に閉じ込められていたわたしにとって、
彼だけが唯一の光だった。
「 セス、大好きよ 」
「 セス、ずっと一緒にいてね 」
「 セス、 」
そう呼ぶたび、セスは頬を緩めて笑ってくれた。
他の人にはわからない、わたしだけにわかる、微妙な表情の変化。
「 アラキナ、お前にはグレンジャー家に嫁いでもらう 」
15の秋。
その塔から解放されたわたしは、お父様にそんな申告を受ける。
いわゆる、"政略結婚"。


