「どうして」 「…………」 かすかに、唇が動いたみたいだ。 岸谷さんの制服のボタンが、窓から射しこむ光に、きらめいたのが 奇妙に印象に残っている。 どんな顔をして、あたしを見つめていたのかしらない。 掌から岸谷さんの体温がつたわってきた。 少し視線を上げると、 しわのない唇がかたく結ばれている。