彼があたしを抱くとき


海はどこまでも拡がる。

あたしの身体の内部までも侵して拡がってくる。

母が後ろをふりかえった。

立ちつくしているあたしを見て、歩きだす。

拡がりかけていた海が、引いていく。

母は死なないのだ。

ただ混乱と激情を静めたいのだ。

母はあたしの目の前でとびこんだりはしない。

母の後まで歩みよる。