彼があたしを抱くとき


あたしは立ち止った。

母は、死ぬつもりなのかもしれない。

足の下で、波がぶつかり合っている。

母の後姿を、無表情に凝視した。

ただ、あたしは闇に吸いこまれる母を見ている。

何度か、右腕が母の身体をささえきれずに、
海におちていく虚しさを、予想する。

それよりは凝視しているほうが、まだマシに思えた。