彼があたしを抱くとき


「もう時間だろう?」

ひどくゆっくりした声で聞きはしたが、鉄柵の間から顔を離そうとはしない。

隣であたしが小さくうなずいたのにも、何の反応も、しめさなかった。

また、しばらく、空っぽの美術館をながめている。

「行こう」

秀太はポケットに手を入れて公園口へ歩きだした。