彼があたしを抱くとき


「俺ね。いつかお前がマンションにきたとき、ああ胸の色がかわっちゃったな、俺ってたいへんなことをしたんだと思った。」

淡々とした声だった。

月が冴々としている。

あたしはそれが月だと記憶しているが、
ほんとうは街燈やビルの燈であったかもしれない。

ともかく二人の頭上に、寒々しいが明るいものがあった。