彼があたしを抱くとき


何が苦しいのか、おぼろげながら理解できる気もするが、
「わかってもらう」ことの方が先決だった。

新宿駅から流れていく人々があたしにむかって、
言葉のつぶてを投げるかもしれない。

早くしないとあたしはだんだん分裂して夜の底でうごめく、
ちいさな泥水のたまりになってしまいそうだ。



どうして、そんなに早く歩くの岸谷先輩!



人の間をぬうように、ふりむきもしない。