彼があたしを抱くとき


新宿の雑踏にまぎれこまれたら、おしまいだ。

あたしは自分で自分がもちきれない恐怖におびえた。

岸谷が、ひとこと「わかってる」と言ってくれればそれで助かる。

あたしは胸をはって母に対抗できる。

あたしはヒロインとしての威厳を守って迫害に耐えればよかった。