彼があたしを抱くとき


なぜ、母が送り迎えをしたのか。

それは力による強姦から守るためのものだったのではないか。

本位ではない、不本意な性関係を持たないためのものではないか。

だとしたら、岸谷とは、決して不本意だとは言えない。

本位でもないが、そう答えてしまってから、悔やまれた。

母がいっそう、わめきちらすのではないかと。

だが、母にとってはあたしの答えなど、どうでもよかったのだ。

母はしゃべることで、外へ自分のやりきれなさを発散させているだけだった。

「今夜はしゃべりつづけると気が変になりそうだ」と言っては、果てしなく口を動かす。

口もとの筋肉を動かせば動かすほど、母の焦躁の色が濃くなる。