彼があたしを抱くとき


「あのな、お前のこと好きなんだよ。でもな、お前の方が馬力あって」

「十万馬力の鉄腕アトムだもの」

「バカッ、少し黙って聞けよ。どこまで話したか、忘れたじゃないか」

「馬力があってって所まで」

「そう、俺が引け目感じるんだ。男と女と主客転倒って感じだな。
大学だってお前の方がいいとこへいくよ。
将来について、俺がどうしたもんかなぁって思っているのに、
お前は社会学やって、福祉関係の公務員になりたいって、ハッキリ目標さだめてるし、
俺、ついてけないよ。主客転倒って、男にとってやりきれないからね」

「それで」

「もう会わない、苦しくなるから声もかけて欲しくない。ごめん、俺からさそっておいて悪いと思ってる」

「そうなんだ、別にいいけど。友だちを失くすのはおしいけど」

「友だちって思ってたんだ」

「そう……」

「転倒してるついでに、あたしからキスしようかって言おうか」

「……………」

鳩が豆鉄砲をくらったみたいな顔をしている。