彼があたしを抱くとき


「……………」

岸谷が何か言おうとして唇をゆがめて、やめた。

バスの車内は青白い光でつつまれている。

まるで闇の中に辷りだした光る箱だ。

岸谷と二人で、現世から離れた箱の中に腰かけているような気がしている。