これは、私の中の遠い昔の記憶

「ねぇ、お母さん」

「なぁに?泪(るい)」

「なんで私の名前は泪(なみだ)なんて悲しい字を書くの?」

「悲しくなんかないわよ。だって、泪(るい)が生まれた時お母さん、泪(なみだ)を流して泣いたもの。」

「悲しかったの?」

「ふふふ、違うわよ。嬉しかったの。泪(なみだ)は悲しい時だけじゃなくて、嬉しい時も出るのよ。」

「そーなんだ」

「だから、辛いこともあるけど泣くほど嬉しい事に、いっぱい出会って欲しかったから、あと誰かのために泪(なみだ)を流せるほど強く優しくなって欲しかったから、泪(るい)にしたの。」

「?」

「ちょっと難しいかな?でも、焦らなくても大丈夫。いつか必ずわかる時が来るから。」

「ほんとに?」

「ええ。大きくなったらね。」

「わかった!すぐに大きくなる!」

「うん。楽しみね。泪(るい)がどんな子に育つか。」

そして、母と子は笑いあった。
幸せだった。
少なくともこの時は…