車に乗り込んでからも、なぜかボロボロと涙を零す季蛍を抱きしめて。
「もう泣くなよ…」
お酒に強くない俺と季蛍だから、特に季蛍はお酒の入った俺を怖がるんだろう。
何をするかわからないから。
目は不自然に真っ赤になっていて。
「そんなに嫌なのか」
「……嫌じゃないけど…嫌」
「ん?なんだそれ」
「ッグス……」
「季蛍を泣かせちゃう俺もまだまだだね」
季蛍は首を懸命に振っていたけれど。
「デート、行くところ決めとけよ」
「ん、うん」
「…場所によってはおおかみになるけど」
「もうやめて!」
「んふふ。まぁ季蛍の『嫌い』はもう聞きたくないしね」
「……」
「まぁ…遅刻するから病院向かうよ」
そう言って病院へ向かおうとした途端、頬に何かの感触があって。
振り返ると、今度は唇を塞がれて。
「…んふ、仕返し」
そう言って笑った季蛍の笑顔を見たら、反射的に季蛍の体を引き寄せていて。
また唇が触れた。
「……っ」
「やっぱりおおかみ封印しない」
「え、ええッ」
"今晩は覚悟しとけよ"
そう思ったけれど、季蛍には内緒にしておく。
たまには季蛍からのちゅうだって欲しい。
やっぱり"おおかみさん封印"はできそうにないかも。
「季蛍?もう一回」
「え?何を?」
「ちゅう」
「……な、なんで」
「…いいから。遅刻するよ」
「え……えっと……大好き」
そう言ってから唇を重ねた季蛍は頬をりんごのように赤くした。
「ッ……俺も」
何度も誓ってきたいろんな約束。
だけど今ならまた言える。
"絶対離さない"
って。
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