───午後9時半



ベッドに季蛍を下ろすと、眠っていた季蛍が目を覚ました。


「…病院」



「…ん?病院じゃないよ」




季蛍の体に毛布を掛けると、季蛍はキョロキョロと辺りを見回す。



「家だよ」



その言葉を聞いてか、体を起こした季蛍はまた辺りを見回して。



「…入院……は?」



すでに片目からは涙がポロリとこぼれた。



「入院?…しないよ」



右手で頭を撫でて、その手を背中に持っていって引き寄せる。


ぎゅっと抱きしめると、泣き出す声が聞こえた。



「どし……ッ…て…ッ」



「…どうして?入院したくないだろ?」




「…したく…ないけど…ッ」



泣き出したら止まらない季蛍は、俺の背中にも手を回して。



「高島が考えてくれたよ。…今回は入院は避けようって」



「…っ嘘」



「嘘なんかじゃない。…その代わり季蛍は頑張ることいっぱいあるよ。入院みたいにすぐに看護師さんが駆けつけて来る訳じゃないから」




「……ッだって高島先生…入院する?っ…てっ」



「あの後高島が考えてくれて…家で季蛍のこと元気にしようって」




季蛍の中には入院するって覚悟はあったらしい。 


「…よかったな、入院しない」