「蒼先生、島根先生が入っていいとおっしゃってます」


待合室の椅子でぼーっと時計を眺めていたら、看護士が出てきて言った。



頷いて診察室の中に入ると、ベッドにいくつかの小さなぬいぐるみを並べる奏太がいた。


「ごめん、外来時間外なのに」



「ん?別に。時間あいてたし。それに薬だけなんだろ?お安いご用」



「…ありがと、助かる」



「でも薬なら高島にでもほほいと出してもらえば良かったのに。それこそ季蛍さんにでも」



「…まぁな」



「季蛍さんもこの前大変だったでしょ?発作」



「あぁ…でも落ち着いてる。仕事終わりに高島のとこで吸入してるみたい」



「そう、問題ないならいいんだけど」



パソコンをじっと見つめて、奏太は俺に目を移す。



「咳だけなんだろ?」


「あぁ…熱もない」


「咳止めだけ出すよ。看護士さんボタン開けて」


「んふ、何でだよ」



「え?はは、ごめん。小さい子の診察のときいつも言ってるの、口癖」



奏太の苦笑いに頷いて、ワイシャツのボタンを数個開けた。