患者さんには自分で普段言ってるくせに、自分が苦しくなったときは自分で抑えられない。


本当情けない…。



本格的な発作が始まる前に吸入しなきゃ…


そのことだけは頭にあった。




今日一日外来も何もかも安定して出来ていたのに、最後の最後でいつもこう。



診察室に戻って椅子に腰をかけ、深呼吸を続ける。



薬のおかげか大分呼吸に余裕が見られたので、まだ途中だったパソコンに手をかけた。


……んだけど。



細かい咳が出てきて、嫌な予感が頭をよぎる。



「季蛍先生、確認お願いします」



「…あ、はい」



奥から出てきた看護士から紙束を受け取ると、荒い咳が止まらなくなった。



「季蛍先生?大丈夫ですか?」



「…ん、うん」



「風邪ですか?咳…」



体をパソコンの方へむき直した途端、パソコンの文字が歪む。


「…ッハァ…ッハァ…」







「季蛍先生ッ?」