「ん?」


「…やっぱりなんでもないです」



「え?何だよ」



「…いいです」



…───コンコン



季蛍の曖昧な表情に首を傾げると、ドアがノックされた。



「失礼しまーす」



「あれ?蒼先生…」



「ん?」



「連絡してないのに…」




「あぁ、なんか看護士がここに季蛍がいるって言ってたから。もう帰るし寄ってみた」



「今ちょうど連絡しようと思ってたところで」



「そっか、良かった」



蒼先生は季蛍を見て微笑みを浮かべる。



「何、気分悪いの?」


「ううん、大丈夫」


「また肺炎なんかになるなよ」



そう言って季蛍の頭をくしゃくしゃ撫でる。



「大丈夫だよ…なんないもん」