「……あれ?桜ちゃん遅いですね、もう一度声かけてきます?」
「うん、よろしくー」
パソコンに向けていた視線を看護師に移すと、『呼んできます』と診察室を出て行った。
数分カルテを眺めていたんだけど、一向に来る気配がない。
診察室のドアを少し開けて、廊下を覗いてみると、待合室には数人の子供が既に座っていた。
「あ!先生だ」
「あれー?この間具合悪そうだったのに。元気になったの?」
「なったの!」
この笑顔にお母さんも嬉しそうに微笑んで「先生のおかげです」と言う。
「いえ。良かったですね、元気になって」
「はい」
嬉しそうな親の顔を見てると、こっちまでほっこりする。
「あ!島根先生」
看護師の声に顔をあげれば、待合室の隅っこで佇んでいて。
「…ん?」
「あの…」