──「ただいまー」
「おかえり!やっと帰ってきた」
部屋に入ると待っていたかのような顔をして、愛優が寄ってくる。
「…ん?」
「風邪薬ほしい」
「…ふはは、鼻声」
「しょうがないじゃん…パパが病院から風邪菌もらってくるからでしょ」
「俺のせいなの」
「そうなの」
「はー?風邪菌なんてもらってきてないけど」
荷物を下ろして愛優を見れば、咳を繰り返す。
「ちょっと待ってて。…あと季蛍もそんなところで寝るのやめて」
仕事着のままソファで丸まっている。
「…少し休んでるだけ」
「そう言って寝ちゃうのが季蛍でしょうが」
丸まる季蛍の背中を叩くと、不満そうな顔で睨んでくる。
「愛優、薬」
「あ、ありがとー」
「おでこ」
「……がどうしたの?」
「こっち来て」
「ないよ熱。計ったし」
「…ほんとだ。早く寝なよ、悪化する前に」
「はーい」