「びょ……ぃ……行かな…ッ」
「しー……音聞いてるから。口閉じて」
人差し指を唇に当てれば、ポロリと涙を一粒零して我慢したようだ。
「………ん、いいよ」
聴診器を抜いてボタンを留めてやれば、ぶわっと涙を溢れ出して…。
「病院………かない」
と一言。
「はぁる……先生と約束してるから」
「………ッグ……ヒッグ…」
「今聴いたけどゼーゼーしてるよ?喘鳴出ちゃったら先生に診てもらった方が話が早いよ」
「…ん、だぁ………やだぁっ…」
そう言って子供みたいに泣き喚く。
……全く。お母さんでしょうが。
「…もう泣かない。我慢して」
「……ッヒッ…グ……ッグス…」
口をきゅっと結んで俯いて涙を堪える陽を見て、なんだか笑みがこぼれてしまう。
「…陽泣いてたら結困っちゃうよ」
抱きしめてやれば
『港もずっとパパでいて。お医者さんにならなくていい』
不満そー……な小さい声。
「…………はいはい」
胸に顔を埋めて、また泣き出す陽の背中をさする。
「もういい加減泣かないの……先生んとこそこまで行きたくない理由がわからないよ…俺」
「……う……ッグス……ごめ……」
「わかったから泣かない!…ね、笑って」
胸に顔を埋めていた陽の肩を起こして、手でそっと涙を拭う。