───ガチャン……バタンッ…




「……ただいまー」


腕時計は9時を指している。



少し遅くなったなぁと思いながら部屋に入ってみると、ソファに座る陽の姿。



母さんの姿はない。



「陽?」



「あ、港おかえり。帰ってたの」




「…あ、母さん。今帰ってきた」




母さんがキッチンから来たと思ったら、安心したようにため息をついて俺の背中を押した。




「陽ちゃんが…」




「…ん?」




「さっきから気持ち悪いって。…私どうしたらいいかわからなかったからとりあえず水だけ持ってきたんだけど」




「…陽」



近くに寄って名前を呼べば、ゆっくり目が開いた。


「…どきどきしてる」



右手を胸に当てて少し首を傾げた陽の顔色は、確かに青ざめている。



「……手」



ゆっくり伸びてきた手首を握って、腕時計を見つめて脈を測る。


「…気持ち悪い」



脈に当てている指からはトットッ……と速い脈が伝わってくる。



気分悪いのも当然……か。




「…陽ちょっと待ってて。薬持ってきてあげる」