そっぽを向いちゃう凜の胸の音を聞いていると、カチャ…と季蛍さんが戻ってきた。
「…芙羽くんごうか~い」
「…ん?」
「ボタン…全部開けちゃうなんて。蒼もたまにしかやらないですよ」
聴診器をまた首にかけてからボタンを留めてやる。
「服の隙間からだとやりづらくてさ…。俺いつも患者さんの服自分で少し開けちゃうんだよね~。
嫌われてたりして、俺」
「ええ?そんなことないですよ!私いつも襟の隙間とかですけど…蒼も」
「やっぱ皆そうなんだ」
「…夫婦だとそんなこと気にしないんですけどね」
紙袋から出された箱が開けられると、いくつか美味しそうなケーキが。
「あ、好きなの選んでください。私は凜と半分するので」
「…なんか高そうなケーキ」
「んふふ、そんなことないんです」
「そう?」
「味は美味しいですけどね」