手にファイルとボールペンを持っている蒼くんが、少し椅子を寄せて首を傾げた。
「うーん……とね…。陽さん今朝は戻した?」
小さく頷くと『そっか』と微笑みを向けられる。
「…今朝はどうして吐いちゃった?」
その問いには、首を振らずに…服を握った。
「…」
「……どうして?」
「…………」
港も…蒼くんも…誰もせかすことなく沈黙が続く。
俯くと、溜まった涙がこぼれ落ちそうで。
下を向けないけど、蒼くんとも目を合わせられなくて。
「……」
沈黙にも耐えきれなくなって、ゆっくりと…重い口を開いた。
「…体重…増えるの……怖…くなっ…て」
「…うん、わかった」
それ以上聞いてこないのも、蒼くんの優しさ。
「気分が悪くなったら…戻す前に港呼んで…少し気分落ち着かせてみて。あんまり吐くと胃に負担がかかっちゃうからね」
「……はい」
「ん、俺はここまで!ごめんね、ほんとちょっとだけ話聞きたかったから。聞けてよかった」
「…はい」
「じゃあちょっと待ってて?季蛍に確認してくる」
「あ、…はい」