「陽ー?そろそろ戻ってきなよ」
無返事。
「…どうしたんだ」
結を腕の中に抱きつつ、洗面所に顔を出してみると。
前屈みの陽がいて。
…まさか風邪でも引いたか?
そう思った俺の考えが違うということが、陽の近くに寄った時にわかった。
「あッ…陽…」
口の中に手を入れて吐こうとする陽は、来ないでと言うように首を振った。
「なぁ、何で吐く?…やめろ、吐かないの」
そう言ってもえずくばかり繰り返していて。
「陽」
あいている片手で陽の手を引っ張るけど、首を振ってやめてくれない。
「吐くな。……病院行くことになるよ」
脅したつもりではないけど、水を流して手を洗い始めた陽。
「……どうして吐こうとなんかするの」
振り返った陽の目はウルウルで、瞬きをしたら涙が一粒落ちた。
「リビング来て…水入れるから」
「……」