「でも……たまに…脈、飛んでる…」
自分の口から言うと、まるで体調が悪かったのを認めたみたいで…泣きそうになった。
「脈が飛ぶ?…自分で気づいてるじゃん、不調」
「……。」
「あぁ、ごめん。認めたくないのね」
俯く私の前髪をそっと分けた高島先生は、『ごめんごめん』と少し笑った。
「俺何年も季蛍の主治医やってるだろ?…何回も季蛍の体調不良見てきてるし、何回も季蛍の涙見てるけどさ。
……自分から言えたのって少ないよね?」
「……」
ちょっと…あやふやに頷くと、高島先生は笑った。
「季蛍もやっぱりお医者さんな訳なんだし、季蛍がいないと困る人っていっぱいいるから。
しんどかったらいつでもおいで」
「……はぃ」
『んふふ、泣き虫だなぁ…やっぱり』
と付け加えて、高島先生は頭を撫でた。
その撫でてくれた手が、今度は優しく手首を掴んだ。
「蒼先生にも自分から言うんだよ。俺より蒼先生の方が身近なんだから」
さりげなく脈をとりながら、高島先生は壁掛け時計を見つめていた。