「結が生まれてさ……すぐに亡くなった人を目の当たりにすると…なんかよくわかんなくなっちゃうんだよ、もう」





「……手術、成功しなかったのか?」





港は首を振ると、





「…もう、手の施しようがなかった。

あと…少し、早くあの患者さんに会えてれば…。もっと違ったと思う」






「……ご家族はなんて?」





「…手を尽くしてくれてありがとう、って言われたよ。先生でよかったです…って。




俺、もう…なんか訳わかんなくてさ。救いたい命を救えないって…無力だよな、俺」





ため息の後、コーヒーを飲み干す港は、少し手を震わしていた。




「…まぁ、港も無理すんなよ。陽さんだって…大変な時だろうし」





「…ほんと、俺も家にいてやらなきゃいけないのにな。 



医者不足って怖いね」





「………」





返す言葉が、なかった。