スーッと横ではなく、上へ車のドアが開いた。 「じゃあ、行ってくる。夜に連絡をしてくれ。」 と言い残し、その高級車から降りて出てきたのは同じ色のネクタイをした背の高い男の子だった。 きっと私と同じようにこの学校へ入学するのであろう、少年。 きっと私とは別の世界に住んでらっしゃるのだろう。 私はどうすればいいのだ、この高貴な方に話しかけても良いのだろうか。 いや、やめておこう。ここは無難にすれ違った人Aを演じる事が最善策だ。 そう決心し、敢えてその少年と目が合わないように俯いた。