幼馴染み～初恋物語～

「櫻ちゃんっ!!もう少しで自転車に乗れそうだよ？」

和樹がそう言いながら、寂しそうに見えた櫻に向かって、笑顔で駆け寄ってきた。

「うん。もう少しで乗れそうだね？」

「僕が自転車に乗れるようになったら、お菓子を買いに行くのも楽になるよね？」

「うんうん。近くのコンビニにも早く行けるようになるよ？」

笑顔を見せて和樹を出迎える櫻の視線は、明らかに愛瑠を意識したものになってしまっていた。

チラッと横目で愛瑠を見ると、和樹に向かって走ってきて、後ろから二人の話題に入ってくる。

「もう少しだね～？乗れるようになったら、愛瑠と一緒にもっと大きい公園に行けるね～？」

「うん。今度行こっか？」

愛瑠は「一緒に」と言っただけで、
「二人きりで」
「櫻は一緒に来ないで」
と言われたわけでもないのに、１度疑うと、こんな何気ない会話も引っ掛かってしまう櫻。

二人が楽しそうに話しているのを見ていると、また櫻の表情は曇ってきた。

こういう時、男は鈍感なもので、なかなか微妙な乙女心に気付けない。

まだ幼い和樹ならなおさらだった。

二人を見ていた櫻が溜め息をつくと、その場で俯く。

私も愛瑠ちゃんも…………

一緒に和樹君を好きになったらどうなるんだろう…………？

そんな不安が櫻の頭を過っていた。