「走るの疲れたからちょっと休憩…………」
自転車を支えて走っていた修が公園のベンチに座って、自分のリュックサックから水筒を取り出した。
「あぁ疲れた…………」
「修くんっ!!和樹君に自転車の乗り方を教えてくれてありがとうね~っ!!」
和樹も修と一緒にベンチに来るものだと思って先回りして待っていたが、途中で和樹の元に愛瑠が駆け寄っていく。
愛瑠が持ってきた水筒のお茶を、コップの代わりになる蓋に入れて和樹に渡したのだ。
「頑張ってる時の和樹君ってカッコいいね?」
「そうかなぁ?自転車に乗れないんだから、カッコいいとは思わないんだけど?」
カッコいいと言われて悪い気がする男はいないだろう。
和樹は謙遜していてもやはり嬉しい。
「僕、もう少し修君と頑張るからね?」
「うんっ!!愛瑠も応援してるからね~っ!!」
嬉しそうに話している和樹と愛瑠を見ていた櫻は少し元気がない様子。
それに気付いた修が不思議そうに声をかけた。
「んっ?櫻ちゃん?どうしたの?」
「ううん…………なんでもない…………」
まだ愛瑠が和樹を好きだと決まったわけでもないのだが、何度もカッコいいと言って、先にお茶を渡す姿を見せられると、どうしても不安になってしまう。
その時、修と櫻が話している目の前で、愛瑠が言った。
「愛瑠ね?一生懸命頑張ってる男の子って、すごくカッコいいと思うんだぁ」
「ありがとう。カッコいいとかなんか照れちゃうなぁ?」
和樹はその時、ふと思い出す。
頑張ってる人がカッコいい…………
櫻ちゃんも同じ事を言ってたような…………
?
和樹が櫻を見ると寂しそうな目で二人を見ている事に気付いた。


