炎天下の夏のある日、いつものように幼稚園の帰りに、和樹と和樹の母親、櫻と櫻の母親の4人で家の近所の公園に来ていた。

母親達が井戸端会議をする隣の砂場にいる櫻は、ツインテールに髪を結んでもらって、子供用のエプロンをつけた格好はまるで小さなお母さん。

一生懸命ママゴトセットのお皿に砂を盛って遊んでいる。

その公園の真ん中の方で和樹は小学生達とサッカーをしていた。

和樹は幼稚園児から入れるフットサルスクールに通っている為、小学生の低学年が相手なら、互角でサッカーができるのだ。

短髪にアイドルっぽい可愛い顔。

櫻にとっては王子様。

そんな和樹が休憩をするために砂場にやって来ると、櫻が砂の入ったお皿を持って出迎えた。

「おかえり~っ!!」

お皿を投げ出して、和樹の元に駆け寄って、頬にチュッとキスをした。

櫻はアニメのおかえりのキスシーンを見て、それを真似しているつもり。

「あっ…………ただいま。今日も得点決めたよ?」

頬にキスをされて照れ臭そうに笑う和樹は、いつも言葉が決まっていた。サッカー選手気分なのである。

「今日もサッカーお疲れ様。ご飯にする?それともお風呂にする?」

お皿を投げ出して出迎えておいて、ご飯にする?はないと思うが、そこは幼稚園児から見た母親のイメージ。
どこかにお皿を置いてるつもりなのだろう。

「じゃあご飯にしようかなぁ?」

「どうぞ?美味しい?」

「うん。櫻ちゃんは料理作るの上手だね?」

サッカーの合間でも、櫻の話に邪魔臭がらずに、相手をする和樹。

ママゴトとサッカーの融合。

そんな遊びをするのが、櫻と和樹の毎日の楽しみだった。