和樹が櫻に見せたのは、お菓子の景品に付いていたおもちゃの指輪。

先程まで泣いていたのが嘘のように満面の笑みを浮かべる櫻。

「あぁっ!!これってお嫁さんがもらうやつっ!!」

「そうだよ?手を出して?」

テレビドラマのワンシーンの真似をした和樹が、櫻の小さな手のひらに指輪を乗せた。

「これで櫻ちゃんは僕のお嫁さんだよ?」

「うんっ!!和樹君のお嫁さんにしてくださいっ」

櫻が貰ったばかりの指輪を嵌めようとしたが、親指でも抜け落ちてしまうくらい大きな指輪を見て、笑う二人。

「この指輪が入るくらい大きくなるまで大切に持ってるね?」

「そうだね?櫻ちゃんが大きくなった時にこの指輪をしてね?」

櫻が和樹から貰ったおもちゃの指輪は大切な宝物。

大切そうにポケットに入れた櫻は、大きくなったらこの指輪をつけようと心に決めた。



こうして卒園式の日に、桜が満開の公園のブランコで、二人だけの結婚式が行われたのだった。