幼馴染み~初恋物語~

「俺は櫻ちゃんと付き合ってないよ…………」

「えっ…………?」

恋は盲目。

好きな人に突っ走りすぎて、回りが見えなくなるという事だが、逆に作用することもある。

好きだからこそ、和樹は櫻の気持ちが見えていなかったのだ。

勝手に櫻は自分を好きじゃないと思い込み、勝手に嫉妬して今に至る。

思春期の多感で幼い考えが、和樹の行く道を阻んでいた。

まだ半信半疑の和樹は、目をパチパチとさせて驚きを隠せていない。

「どういう事ですか?本当ですか?」

「あぁ…………だから和樹君も自分の気持ちに正直になれよ…………」

「ちょっ…………ちょっと…………」

これで櫻が和樹を呼び出せば、告白できるお膳立てができた。

これ以上話していると、櫻が告白するより先に、和樹の事を好きだと健一から伝えてしまうかもしれない。

呼び止める和樹を無視するように、去っていく健一の背中は凄く寂しそうだった。

櫻ちゃんと仲良くしてやってくれよな…………

お前が櫻ちゃんを泣かすような事があったら…………

俺が本気で奪うからな…………