泣いているうちに、眠ってしまった櫻が朝起きると、トークアプリに健一から着信が残されていた。

【本当にごめん。凄く怒ってるよね…?櫻ちゃんが嫌がるのわかってたのに、あの時、俺はどうかしてた。また学校で会うことがあったら、今まで通り普通に接してもらえると嬉しいな。今日は本当にごめんね…………】

櫻は携帯を眺めながら、どんな返事をすればいいか考えていた。

謝らないで…………健一先輩…………

嫌だから逃げ出したわけじゃないから…………

でもどうすればいいかわからなかった…………

そのまま甘えて付き合うという選択もあったと思う…………

でもまだ和樹君の事を諦めたくない気持ちもあるんだ…………

そこで櫻が健一に送ったのはこんな文章。

【大丈夫ですよ。気にしていません。私の方こそいつも励ましてくれてありがとうございます。でもまだ和樹君の事を忘れられていないから。これまで通りの優しい健一先輩でいてほしいです】

このお祭りの後、櫻と健一はなかなか顔を合わせる事がなかった。

わざわざ会いに行かないと、校舎の階も違うし、何より健一は高校受験が控えている。

テニス部の練習に付き合っている暇などなくなる時期が来ていた。