友達に戻りたいと叫んだ数日後に、他人に甘えて抱きついている自分自身が許せなかった。

和樹のキスを見せつけられた後に、辛くて自らも健一に抱きついていたのだから、当然キスをされても健一を責める事などできない。

私はキスをしたいとは言ってない…………

事故みたいなキス…………

そうだ…………

あれは事故なんだ…………

私はまだ和樹君を好きでいる資格はある…………?

どうしてここまで櫻が健一とのキスを否定するのか?

それは、健一と唇が重なった時、嫌だと思わなかったから。

そして、和樹の事をこのまま忘れられるかもしれないと思ったからだった。

幼い頃に出会って約8年の初恋。

この数ヶ月で、音を立てて崩れていく秋の夜だった。