幼馴染み~初恋物語~

杏佳と一緒に露店を回っていても、和樹は浮かない表情をしていた。

櫻が好きな気持ちを紛らわせるために杏佳と付き合っていたので、いつでも別れるつもりでいた。

思春期の男の子の恋愛は、女の子よりはるかに幼い。

可愛いから付き合う。

他に可愛い子に言い寄られれば、天秤にかける。

だから友達の延長のような気持ちで付き合っていた名前だけの彼氏でいた和樹が、はっきり杏佳を好きだと言ってキスしたのは、櫻が健一と幸せそうにしていたからだ。

自分しか知らない櫻のキラキラした本当の笑顔を、健一の前で見せていたのだから。

友達に戻りたいって聞こえた時は、櫻を追いかけたかった…………

心のどこかで噂なんて嘘だと思っていた…………

でも嘘なんかじゃなかったんだ…………

これからは杏佳とちゃんと向き合おう…………

凄く大切にしてくれてるのに、俺は杏佳を見てなかったから…………

和樹は杏佳の横顔を見て、ニコッと笑った。

「一緒にたこやき食べよ~?杏佳の分も買ってあげるから」