幼馴染み~初恋物語~

「はい。一緒にお留守番してます」

今、健一が使ったのは言葉の魔術。

もしも「柚乃ちゃんと一緒に買いに行く?」と聞けば、櫻は一緒に買いに行っただろう。

「俺とここで残る?」と言えば、いかにも柚乃の言う通り、二人きりになりたいと言わんばかりの発言になる。

「みんなが来るまで留守番してる?」と違う目的を言う事で、櫻はみんなを待つ為にここに残るというイメージを持つ。

生理的に受け付けないような男なら、それでも柚乃と行ってしまうだろうが、二人で残る確率が上がる話術だった。

柚乃もいなくなって、二人きりになると、健一はみんなに待ち合わせ場所を知らせるメールをして、いつものように話しかけてくる。

「櫻ちゃんは何も買わなくていいの?せっかくお祭りに来たのにジュースだけじゃ寂しくない?」

「そうですね?健一先輩は何か買わないんですか?」

「そうだなぁ…………櫻ちゃんが喜ぶようなぬいぐるみのくじ引きでも行く?すぐそこにあるから」

健一が指を差した方向を見ると、ぬいぐるみがいっぱい並んでいる露店が見えた。

「行きたいですっ!!」