幼馴染み~初恋物語~

その時、櫻はふと和樹が夏休み前に言った言葉を思い出した。

「俺、杏佳さんと付き合う事にしたから…………もう俺に近寄らないでくれないかな…………?」

彼女がいると、話すのもダメなのだと思い知らされたのだ。

泣き顔の今でなくても、祭りに行く約束なんて、放課後でも明日でも明後日でも、トークアプリでもよかった。

それでも今すぐ健一に会いたくなった櫻だったが、気付かれないようにそっと引き返した。

私は健一先輩に何を期待していたんだろう…………

お祭りに行く約束をするなんて、ただの言い訳…………

泣いてる顔を見せて、慰めてほしかった…………?

和樹君と友達に戻れるアドバイスが欲しかったから…………?

初恋の和樹と、一度告白を断っている健一の間で揺れる櫻。

結局、健一には夜にトークアプリで【テニス部のみんなとお祭りに行きたいです】とだけ送っておいた。