幼馴染み~初恋物語~

女子トイレの個室に入った櫻は、壁にもたれ掛かって、両手で顔を覆って泣いていた。

「ち…………ちがうもん…………付き合ってないし…………話したって大丈夫だと思ったから…………」

中学での幼い恋は、初めての恋人という事もあり、束縛しがち。

恋人以外の異性と話しているのを見ると嫌がる人も多い。

それを誰よりも和樹が思っていた。

櫻が誰かと話しているのを見ると嫉妬してしまうからだ。

そんな櫻が自分の知らない間に健一とファーストキスを済ませて、「夏休み中には付き合えるかも?」と言っていた櫻の話も辻褄が合う。

和樹は杏佳と廊下を歩きながら浮かない表情をしていた。

なんで今さら話して来たんだよ…………

俺の彼女は杏佳なんだ…………

少しずつ櫻を忘れられてきたのに…………

仲良くなりたいって、俺は無理なんだよっ!!

恋人のいる櫻なんて、何を話せばいいかわかんないよっ!!

杏佳と付き合って3ヶ月になるのに、和樹もまだ櫻の事を好きなままだった。