幼馴染み～初恋物語～

そんな気持ちで脅えていた櫻に、和樹は無表情のまま言った。

「何か用？」

「ううん…………なんでもない…………」

以前とは別人のように冷たい和樹に、俯いたままの櫻は、呟くように話すのが精一杯。

その時、立ち去ろうとする和樹が捨て台詞のように小さな声でボソッと言った。

「櫻ってテニス部の先輩と付き合ってるらしいな…………？俺と話してたら浮気と思われるぞ…………」

ハッと櫻が顔を上げると、和樹は廊下にいる杏佳の元へと向かっていた。

えっ？付き合ってないよ？

恋人がいたら他の人と話したら浮気なの？

友達に戻るのも無理なの？

話しかけるだけでもダメなの？


櫻は今すぐ全力で否定したいのに、頭がパニックを起こして、何から話せばいいのか一瞬わからなくなってしまった。

「ちがう…………ちがうよ…………」

廊下に出た和樹に、全く聞こえない声で呟くしかできない櫻。