幼馴染み~初恋物語~

じゃんけんで勝った順番に、真っ暗な山奥へ男女ペアで入っていく。

山奥で悲鳴を上げる女の子の声が聞こえると、櫻も他の子達と同様に脅えていた。

怖くて口数が減ってくると、ゴーン♪という鐘の音が聞こえてくる。

この番から離れて5分ほど。

往復10分間の肝試しになる。

10分間、健一先輩と二人きりかぁ…………

なんか緊張するなぁ…………

隣にいる健一の顔を見たり、違う方面を見たり、落ち着かない様子の櫻も順番が回ってきた。

「そろそろ俺らも行こっか?」

「あっ!!はいっ!!」

櫻は恐る恐る健一の後ろについて、山奥に続く道を歩いていく。

二人きりになると、健一先輩は私で良かったんですか?と何度も聞きたい櫻だが、簡単にそんな事を口に出せない。

違う人と行きたかった。と言われると傷つくからだ。

櫻は何か話さないと二人きりで気まずい。

それに何よりも真っ暗で怖いから話していたい。

こんな時…………

一緒に行くのが和樹君だったら…………

腕を掴んだり、手を握っていても、怖くて泣いたとしても、恥ずかしくないのに…………

今、隣にいるのは、完全に心を許していた和樹ではなく、まだ優しい部活の先輩の域を脱していない健一。

変な奴だと思われたくないという気持ちが先に立っていた。