幼馴染み~初恋物語~

夏休みの試合前の大事な時期に、ゆっくり休んでいいと言ってくれた。

少し立ち直れた時に、また一緒にテニスをしようと言ってくれた。

そんな言葉が、健一に少しでも心配させないように、早く立ち直ろうと思わせてくれる。

普通なら「早く元気になれよ?」とか「今は辛いけど頑張って」などと言うところだろうが、失恋したその日に、元気を出せと言われても、到底無理であり、忘れるように頑張るなんて、今すぐに考えられることではない。

失恋は日にち薬、もしくは新しい恋が始まるまで、しばらく辛いものなのだから。

そして和樹の悪口を言わないのも好印象に思えた要因である。

「櫻みたいな可愛い子を泣かせて、酷い奴だな?」とか「俺なら泣かせたりしない」というのは、軽い男の口説き文句であり、違う形で女を泣かすだろう。

櫻は健一をこれまでの優しい先輩の一人ではなく、頼れる男として意識し始めたのだった。