幼馴染み~初恋物語~

櫻は意を決して、杏佳との関係を聞こうと、部活に向かうために廊下を歩いていた和樹を呼び止めた。

「あ…………ちょっと待って…………」

人が行き交う廊下で、緊張した面持ちの櫻。

杏佳って人と付き合ってるの…………?

私じゃダメかな…………?

寝ている間にキスをした事を言われたら、素直に謝ろう…………

櫻は今日1日、授業に集中できずに頭の中で質疑応答を繰り返し、言葉を用意してきた。

それでも緊張で言葉が出てこない。

「えっと…………あの…………」


私だって柚乃みたいに…………

幸せになりたい…………

勇気を出すんだ…………

何かを言いたそうにモジモジしている櫻に、和樹の口から出た言葉は、信じられないものだった。

「俺、杏佳さんと付き合う事にしたから…………もう俺に近寄らないでくれないかな…………?」

和樹は櫻が中学に入ってから、自分ではない誰かとキスをしたと聞こえてきた為、昼休みに会った時に、杏佳と付き合う事を決めたのだ。

和樹は、櫻とキスをした記憶がないのだから、他人とキスをしていると思って当然の事だった。