幼馴染み~初恋物語~

「王子様、どうか姫を助けてください」


一人の小人役の女の子が台詞を言うと、次は和樹の順番。

しかし目の前にいる王子様役の真吾を睨んだまま動こうとしない。

「おい…………おい…………和樹君の順番だろ?」

見かねた小人役の少年が、肘で和樹を押しながら小声で言うと、やっと台詞を言った。


「さあ…………こっちです…………一緒にいきましょう…………」

棒読みで明らかにふてくされた言い方。

小人の役なんて格好悪いなぁ…………

お遊戯会なんて…………

つまんない…………

それから何日か続いた練習も和樹は相変わらず落ち込んだまま。

櫻が和樹を練習に誘っても

「私が前の台詞を言うから、一緒に練習しよ?」

「どうせ僕の台詞は1つしかないし、間違えないよ…………」

「じゃあもう少しだけ上手に言えるようにしよっか?」

「えぇ…………もういいよ…………王子様が良かったのに、小人なんて、カッコ悪いし…………」

いつもこんな感じ。

一緒に練習して励まそうとする櫻の声も和樹の心には届かない。

大好きなサッカーを公園でしていても、どことなく元気がない。

そうなると櫻もママゴトに気持ちが入らず、和樹を心配そうに見ていた。

そんな日が何日か続いているうちに、お遊戯会の行われる卒園式が迫って来る。