校門まで着くと、何やら騒がしかった。特に女子の声が。
人混みが嫌いな千佳子があからさまに顔をしかめる。
「うっさいわね。普通に通りたい私達の邪魔よ」
「朝から賑やかなこと」
集団の横を通る。
その時、心優の視界の端につい最近見かけた男が、門の前で仏頂面で立っているのが見えた。長く綺麗な黒髪をポニーテールで纏めているが、切れ長の目と骨格から男だとわかる。ブレザーとネクタイ、シャツを崩さず校則の手本のように着る姿は流石と言うべきか。
人気があるというのは本当らしく、校門の集団は彼見たさのものらしい。可愛い女子高生が必死に彼に話しかけている。が、彼はそれらをまるで聞こえていないかのように無視していた。
時折何かを探すように、男は周りを見ていた。
偶々、ふと。
心優と男の目が合った。
集団を掻き分け、男は近付いてくる。
「おはようございます」
きっちり90°腰を曲げた目の前の男。
心優は彼の記憶力を疑わざるを得なかった。
それと同時にさっきまでの騒がしさが消え、ただただ遠くの車の音が聞こえてくる。
男は顔を上げ、心優の前に両手を差し出した。
「・・・・何をしてるんですか?桐川先輩」
「御荷物を御持ちします」
「・・・・・・・・・」
隣の千佳子が心優と哲を交互に見る。困惑しているのが手に取るようにわかるほど、その表情は歪んでいた。
千佳子に心配をかけたくないから、哲のことは秘密にしておこうと心優は考えていた。
それなのに。
「・・・み、心優、知り合い?なんかこの人、見たことあるような・・・」
「・・・・きっと人違いさ。行こう、千佳子」
「みやの、いや、心優様、あ、心優、さん!お待ち下さい!」
「呼んでるけど・・・?」
「同姓同名同じ顔が世の中には3人いるって言うよ」
「心優さん!お待ち下さい!録音はきちんと消しましたから!心優さん!!」
哲の声に後ろ髪引かれる思いはあるものの、ここで引き返したら千佳子に何て説明をすればいいのか・・・。
ひたすら人違いを主張し、心優は哲から離れた。
