私の元部下が敬うのを止めない件



『春の麗らかな日差しに見守られ、木々の新しい息吹を感じられるようになりました。この良き日に、県立実成高等学校の入学式を迎えることができ、とても喜ばしく思います。
中学校の友人、恩師との別れの辛さ、新しい門出への期待と不安に胸を踊らせ、我々第42回新入生は県立実成高等学校の門をくぐりました。
周りにいる同級生との新たな日々を考えると、校庭に咲く桜のように心地が色付いていくのがわかります。
また、これから出会うであろう先輩方との・・・』

プツ、とボタンを押す。
心優の声は途切れ、代わりに静寂が響く。
対峙する二人の空気は決して暖かなものではなかった。むしろ、険悪とも呼べるものだった。

「・・・馬鹿にも程がある」
「・・・・何が言いたい」
「申し上げたいことは山程御座います」
「私にもある」

心優は、ビッと指を向けた。




「ここは女子トイレだ。玉ノ前」




そこには男子制服を着た生徒が一人。










「今は桐川哲と御呼びください。
・・・水ノ美弥神様」