花明かりの夜に

「本を読むのは楽しいんです。いろいろ勉強になって」

「……ほう」


形のよい唇の片方がかすかに上がる、そのどこか皮肉な表情が気になった。


「……洗濯女には書物は必要ないと?」

「――だれもそんなことは言っていない」


紫焔は“おやおや”とでも言うように、芝居がかったしぐさで肩をすくめた。


(わたしったら、何を若さまにつっかかってるの)


自分でもよくわからなかった。


「ですから、今日はおいとまします」

「そう。……まぁ、いい。

じゃあ、明日に」

「はい。失礼いたします」


部屋を辞して、座してふすまを閉めながら。