花明かりの夜に

「……続きを読ませていただきますね。

ええと、このあいだの続きは――」

「……じゃあ、少しだけお願い」

「喜んで」


行灯の薄暗い光のもとで、沙耶はていねいに書物を読み上げた。


書物を読むのは楽しい時間だった。

自分の勉強にもなったし、何より桔梗が喜んでくれるのがうれしかった。



「……沙耶さん、若さまに会ったの?」

「……え?」


音読の合い間に突然口をはさまれて、ぎくりとして目を上げた。

桔梗の何も映さない目がじっと沙耶に注がれるのが、何だか落ち着かない。


「はい。お会いしました」