花明かりの夜に

沙耶の声に上体を起こした桔梗――齢四十七になる春日家の奥方――は、目を閉じたまま心配そうに首をかしげた。


「今日はいつもより遅かったのね?」

「……はい。遅くなりまして申し訳ありません」

「いえ、いいのよ。

疲れているでしょう、今日はいいから休んで」

「桔梗さま……」


思わず、じっと桔梗のおだやかな顔を見つめる。


傷つきボロボロになった当時十六の沙耶を拾って、何も聞かずに使用人にしてくれた。


ここ1,2年で、病によって視力をほぼ無くしてしまった桔梗。


(桔梗さまの目の代わりになることができたら――少しでも喜んでいただけたら)


少しでもこの人の役に立ちたい。恩返しがしたい――