花明かりの夜に

(どんどん人が少なくなっていったっけ。

別の一座に行ったり、別の仕事に就いたり――

どこへ行ったかわからない人もいっぱいいた。

残された人たちも、これからどうしていくか、自分の主張ばかりでちっともまとまらなかった)


いよいよ自分の身の振り方も考えないといけない――

そんなときに沙耶に声を掛けてきたのは、看板男優の弥之介だった。


「なぁ、沙耶。

何か食いに行こうぜ。何でもごちそうするから」


舞台俳優らしい、派手なととのった顔立ち。

ほとんど話をしたことはなかったけれど、舞台でのイメージにひそやかに憧れてはいた。


派手な柄の着流しがよく似合う、いつも口の端をゆがめて皮肉げにほほえむ、悪びれた野性的な風情に。


弥之介は白い歯を見せて、さわやかな笑顔でこう切り出したのだった。